霧のミラノ

平成17年9月24日雪組「霧のミラノ」東京宝塚劇場

柴田先生脚本・中村暁先生(A先生)演出の「霧のミラノ」を見てきました。
本公演を見てから新人公演を観て以来の本公演でした。正直最初は、?なところが満載でしたけど、見終わってからよくよく考えてみると、物語はそんなに悪くはないよなっていう気持ちに変わりました。
柴田先生が演出できなくなってしまい、他の人に演出をゆだねなくてはならないことから仕方ないんでしょうけど、どちらかというとこういう作品は大味系の演出ではなく、小技を効かせる先生の方がいいように思います。今まで、謝先生、荻田先生、そして中村A先生と・・・他にもいたっけか?(尾上先生は別ね)・・・やってきたけど、私は正塚先生とかに一度お願いしたいですねぇ。結構ロマンティックな作品と合いそうなんですが。

あらすじは、宝塚のホームページを参考にしてください。

ミラノに住むイタリア青年が、オーストリアからイタリアを奪還するためのレジスタンスだったんだけど、その途中で、知り合った女性を愛し、最後は命を落としてしまうという話です。その青年を回りのキャストを巧く使いながら描き、オーストリア将校との三角関係も入れてロマンスもちりばめております。ちなみに、ひなげしの4ヶ国語講座もやってくれちゃうお得な劇中歌も味わえます。

プロローグの舞踏会がいいですね。やっぱり人を大勢並べてこその宝塚。この間の長崎しぐれ坂の時の貧弱なチョンパを見てしまった後なので、ものすごく充実したプロローグに思えます。ここでのツボは、アダルトなかしげちゃんといづるんと、ミズと若い奥さんをもらいましたって感じのシナちゃんですね(笑)

物語の印象は柴田作品の大道って感じなんですが(とろとろやるべぇか、とか河岸を変える、とか古き美しき日本語が健在です。)、いかんせん物語のエッセンスを無視したようなばさばさの演出が非常に残念でした。特にコムちゃん演じるロレンツォとまーちゃん演じるフランチェスカ、かしげちゃん演じるカールハインツは、物語の筋からして三角関係があるのに、この三人を葛藤させる場面があまりに貧弱すぎる。柴田先生がよく使った三重唱とかで心情描写させるとか、カールハインツの独白とロレンツォとフランチェスカの描写を並べるとか、そういう技を使わないと、最後にカールハインツがロレンツォを撃つ理由に繋がらないです。カールハインツは軍人としてのプライドと、男としての嫉妬があって・・・という人間くさいところも出した方がもっと魅力的になり、結果物語の厚みに繋がったでしょう。

ロレンツォも飄々とした生き方の中に芯の強さを持つという男なんですが、そうですね、ちょっと前ならノルさんが得意なキャラクターではないかと思います。ちょうど弟分のようなぶんちゃんがミズの演じていたジャンバティスタをやったら結構面白かったかもしれませんね。プロローグで壮くん演じるエルコレが関係者に聞き取りしていてロレンツォのイメージを引き出そうとしておりましたが、あの場面を繰り返すより、本人のエピソードを場面に展開した方が更に印象強くなって良かったのに。・・・あ、でもそれがないとエルコレの出番がなくなるか(汗)

ロレンツォのこむちゃん。
新公を見た時に、やっぱり本役は違うわなって思いました。いろんな意味で間がよくなっていました。私の好みは、もう少しフランチェスカを通してカールハインツと男同士のバトルをして欲しかったですけど、あっさり系に見えてしまいました。最後、フランチェスカの復讐を止めるのは良かったけど、フランチェスカの腕の中で死なせてあげて欲しかったですねぇ。残念。

フランチェスカのまーちゃん。
ちょっとイメージ違うかなぁと思いました。彼女はもう少し現代の女性の方が合うんじゃないかと思うんですよね。台詞にやわらかさがあるといいなぁと。キンキンとした声が耳に痛いときがあるんですよ。悪くはないので勿体ないな。

カールハインツのかしげちゃん。
そんな訳で、主人公がヒロインと出会い、同時にライバルとなりうる男もヒロインと出会い、主人公とライバルが敵対しつつも、ヒロインを奪い合いになりそうなんだけど、ライバルはヒロインの幸せのために身を引く・・・ってわかりやすいんですけどね、かしげちゃんもそこら辺をわかってカールハインツをやっているんですよね。特にフランチェスカを見た時の獲物を見るような視線なんか、昔の高嶺さんを思い出してしまいます(笑)だからそれを最後まで生かすような演出を希望しますよ、A先生。でないと、拳銃を渡して立ち去っていくカールハインツが間抜けに見えませんかね?

ミズのジャンバティスタ
今回も友達役でちょっと勿体ない感じがしましたが、ジャンバティスタがエンマと大人の部を展開してくれたので、エロスの物足りなさを補うことができました(笑)歌がどうっていうのはもう今さらなので言いませんが、なんつうか雰囲気がいいので、カールハインツ同様OKって感じです。

エンマのいづるん。
バリバリだった男役のいづるんだからこそ、表現できる色っぽさなんでしょうねぇ。ホント、いい女です。こういうの待ってました。スカラ座での逢引ったらもう!電車男風に言えば「エンマ、萌え〜〜〜〜」ですね(笑)いづるんの台詞はいつ聞いても安心できます。今後の大劇場でも頑張って欲しいです。

ハマコ&あみちゃんの夫婦のような同期コンビもなかなか。ハマコはただの酔っ払いのおっさんになりすぎてやしませんかね?新橋のSL広場前じゃないから、もう少し華麗に酔っ払って欲しいかも。

エルコレの壮くんは、最初の方に見た時よりかなりなれた感じがしました。狂言回しって難しいよねぇ。下手すると「いらないよ〜」ってなりかねないし。

クリスチャンの桂ちゃんも頑張ってました。なんせ部下がかなり渋系でもあるし。
でもアドリブのところも変化を出そうとしているのが良くわかったので印象が良かったです。

さすがの専科さん(ゆうちゃんさん、鈴鹿さん、高さん)が出ていたこともあり、脇は完璧でした。

最後に「なんで殺さないとあかんねん?」と突っ込みが入るところが、観劇後の後味の悪さにつながりますが、それがなければ十分メロなストーリー。本当に惜しい作品です。正塚先生って最初に書きましたけど、小柳先生に新人公演だけでなくて本公演も演出させたらよかったんじゃないかしら。