花組:アーネスト・イン・ラブ

2005年09月06日 花組「アーネスト・イン・ラブ」日生劇場

月組からの続演となった花組「アーネスト・イン・ラブ」を日生劇場に見に行った。平日というのにほぼ満員状態。主演の樹里ちゃんが退団となる作品とあって集客があったのだろうなと思われる。

月組を見てきて、作品としては非常に宝塚で上演するにふさわしい「明るくて罪のない作品」であったことから、十分期待していったのであるが、正直同じ作品でこんなに受ける印象が違うのか、と驚いている。

この作品は、主演のアーネストが「まじめが肝心!」と言っていることばに尽きる。貴族社会のかたぐるしいしきたりの中で、ちょっと羽目を外しながらもまじめに生きている青年たちのやり取りを、ガチガチに(笑)まじめにやるからこそ、少しのずれがユーモラスに見えるわけである。作りこんだコメディである。しかし、例えれば芸人たるキャラクターで笑わせるバラエティと、作りこんだコメディの違いと言えばいい。だから1人がキャラクターで面白くしようと線から外れると連鎖で外れていくので結果全然本筋では笑えない。そういう印象を持った。

主役のアーネストに樹里ちゃん。これを退団作品にやるのはちょっとつらいのでは?なんとなく心ここにあらずだったように感じたのは気のせいか。面白い人だからコメディが巧いというのは違うんじゃないかな。もちろん歌は巧いし、その点では月組と比較したら勝つ。細かい演技も巧いと思う。ただ、アーネストの彼女を思う純粋さでは、作らずして勝ってしまったのがあさこのアーネストだった。最後の「家族が欲しいんです」というくだりで、それを実感した。

グウェンドレンのあすかちゃん。貴族というより元気な町娘だった。もう少し楚々としたところと、そうでない女の子っぽいところとのギャップがあると面白かった。帽子の歌のところが、周りの歌と混線して聞こえて、今ひとつきれいに伝わってこなかったんだけど演出が変わったんだろうか?印象が全然違ったな。

アルジャノンのトム。う〜ん、イマイチだった。普段の彼女のキャラクターにはない役で意外性があったのかもしれいないが・・・面白かったかというと微妙。小技が必要な役だったですね。歌はお稽古の跡が見えました。

セシリィの一花ちゃん。彼女はこういったタイプのものは得意だろうなぁと思っていたので安心してみていた感じ。結構いろいろ知恵がついた「娘」の印象でした。

で、結構これは重要な役だと思っていた神父と家庭教師なんですが、神父のまりんさんは彼女の独特の癖というか言い回しというか「ある程度の年齢のオジサンを演じるときの類型」がモロに出てしまって、なんだか艶っぽさがなかった。神父といい感じになる家庭教師の花純さんも結構厳しかったなぁ。

執事のレインにはさおたさんだったのですが・・・このレインの演出、月組の時と違っていましたよね?ダンスシーンなんてこんなにふんだんだっけ?と首をかしげてしまいました。むしろ執事ではなくて神父の方が良かったのではないでしょうか。

花組の下級生は殆どわからないので、なんともいいようがありませんが、まとまりという意味では少し物足りない。なんか真ん中に集中している感じが伝わってきませんでした。

今までのくだりを単に「かつをさんは月組・・・というかかなみファンだもんね」と言われてしまうとそれまでですし、多少身びいきは入っていることは否定しません。ただ、見終わった後にどれだけみんなで幸せな感じになったかという点においては、月組の方に軍配を上げるところです。
こういう続演っていうのは演じる方も難しいでしょうね。