青い鳥を捜して(新人公演)

2005年01月18日 雪組新人公演「青い鳥を捜して」東京宝塚劇場

雪組新人公演を久しぶりに見せてもらった。
石田作品は新公メンバーにはハードルが高い作品なんだろうか?作品そのもののクオリティが高いとは思えないが、ある程度の技が必要なのか?と思った。正直長く感じたし、物足りないものだった。

新公は15分オーバーで終了したことからもわかるように、非常に長い公演だった。後半に「涙の母」が出てきて新劇モードになるのだから、前半はもっとテンポが良くないとメリハリが出ない。わけのわからないノリがあって、最後はわけのわからないうちに泣かされて…というのが本公演の印象だったから、訳が分かりすぎてだらだらと芝居が展開される結果となり、個別には好演している貴船尚ちゃんや、ヒメの演技が盛り上がらず沈下してしまった。多分この作品で「人を信じる」とか「優しさ」を素直に書いていて、泣ける場面だったのに残念だ。

演出は鈴木圭先生。本公演と場面的に違った演出もあった。総論として、なんとなく出演している生徒さんたちは、新公はやりたい、でもこの作品に納得してない雰囲気がちらちらしていたのが気になった。散漫というか、集中していないというか。もっとバカに、ハッチャキになってこそのドタバタ劇なんじゃないかな。本公演はそこらへんのところがやっぱり巧くやってるなと思う新公だった。


主役の桂ちゃんはある程度卒なくこなせるから、普通に芝居をしてしまっていて面白味ではやや欠けた。技術的にできるからこそ、マジメなコメディに徹するべきだ。時折、セリフだけ聴いていると、非常に冷たい若社長に見えた。イシゾウより若いのだから、むしろちょっと抜けていて、だから無邪気に暴言を吐いたりするんだけど実は心は優しい、表現の仕方が巧くない人って感じでもよかったような気がする。歌は上手い。もっと聞きたい。

ケイトのとなみちゃんとシナちゃんは逆でもよかったのではないか?と途中で思い始め、最後にはやはりそうだよなと、ある意味確信となっちゃった。これまた正直言えば、セリフが一本調子で疲れてしまった。桂ちゃんと同期だし、雪組最後であるだけに、だから逆に安心しきってしまったのがわかってしまった。あるいは全くのダークホースと組むくらいでちょうどよく、全体のテンションが上がったのではないかと思った。この役、かなり難易度高いね。

かなめちゃんは、どちらかと言えば一人旅タイプで相手に絡むのが苦手なのか「オレはちゃんとやるから、アナタもちゃんとやってね。そしたら1+1で2になるはず」という雰囲気があった。相手を引き出す芝居をしないと厳しいよな。兄に対しての深い感情が見えないのも辛かった。

シナちゃんは、本公演よりも長めの一人芝居があったが、非常に間が良く客席の反応がよかった。また手の動きとセリフと気持ちが合っていて、娘役がやってもいい役だっかも、と思わず目が釘づけになった。

トウマくんは、面白い。面白いがいつもの彼女のキャラクターの延長上にいた。相手役だった晴華さんがかなり役柄を変えていたので彼女も変えてよかったのでは?先生はキャラクターを変えたくなかったのだろうか。

父役のにわさんは、老け役が多い弊害かかなりパターンに陥っている気が。歩く時に腕を広げ気味にしているが、ヒョコヒョコ見えて威厳に欠けた。お腹が出てるのかスポーツクラブで水泳を10キロ泳いでセサミンを飲んだりしてるガンガン系なのか、よく判らない。前歯にギラギラと金歯を差しているような、一昔前の成金のイメージそのものの金持ちもいれば、さりげなく背広の裏地にお金をかけるような人もいるはず。そしてこの親あってこの子あり、的な共通項があってもよかったのでは? 。桂ちゃんの兄、かなめちゃんの弟、そしてこの父で、ちゃんと「親子」のすりあわせをしているのかな?。「この親ありてこの子あり」という言葉は、いい意味でも悪い意味でも使われるが、そういうのが感じられなかった。

ヒメはシスターで、二重の意味で二人の母。とかくイケイケになりがちだが、今回は技ありで、いい仕事してました。

尚ちゃんは毎度ながら間が良く、普通にいる男ヤモメで可愛い女の子が好きってのが、イヤミにならずに出ていてよかった。だからこそ改心する場面は彼女の見所なのに、相互の芝居が生かされず、かなり滑ってしまったのは残念。

谷みずせちゃんは、可愛すぎてどう頑張っても「オ〇マ」には見えない。なんかTCAの余興で男役が間違って女装しちゃいました的なノリではなく、むしろ「え、ないんですか?」くらいのスーパーニューハーフを目指せ!

コマちゃんはいつみても、麻子に似てる…がそろそろ体を絞らないと(^_^;)役としては微妙な絡み方で本人もやりにくいのでは?

晴華さんは、非常にプライドの高いそろばんづくな女優さんのイメージで本役とかなり変えてきた。それはそれで評価するが、一人舞台の場面での客席の反応が鈍かった。かなりベタなボケの場面も滑っていたのがもったいない。

宙輝さんのワルガキピエールに、ラギの頼りない先生は、面白かった。

最初に「納得していないのではないか?」と書いた。演じなくてはならない生徒さんは文字面ばかり追っていて、淡々とドラマっぽく演じることができるだけに物足りなさがあった。久しぶりに観て辛口になってしまったのは申し訳ないが、雪組らしくないノリの新公だったと思う。