映画「阪急電車」(ネタばれあり)

横浜ブルク13で見てきました。この劇場、AXを3日間見た劇場でして「楽しかったなぁ」とか思い出しながら、もしドラの前売り買っておきました(笑)

すぐ見られる「高校デビュー」にするか「阪急電車」にするか迷っていたのだけど、舞台挨拶で中谷さんが言葉を詰まらせていた映像が印象的で、結局1時間以上時間調整して「阪急電車」を見ることにしました。

不勉強で申し訳なく、原作を読んでいません。
正直なところ、複数の人のそれぞれの物語を織り交ぜて作る作品って、海外ドラマとかでは得意なところだけど、日本の場合あまり成功した事例を見たことがなかったため、期待していませんでした。・・・が、冒頭の中谷さんが後輩に婚約者を寝取られて、男から別れてくれと言われているカフェのシーンで一気に引き込まれました。言葉にならない怒りと、すごい台詞と(え、これ言わせる?って)、ずるい男のお約束

「お前は1人でも大丈夫だろ。こいつはオレがいないとだめなんだ」

っていうあの言葉に、ショックを受けているのだけど、崩れることを自分が許さないっていう有り様が寄りのワンショットで出ていて・・・すげぇと。また、安めぐみが寝取る後輩役で、こびる役が嫌味なくらい自然なんだよね(→褒めてます)。結婚式に白いドレスにティアラという討ち入り戦闘服で出てしまうのだけど、途中退席するときに、引き出物を渡す大杉漣さんも全てを理解して頭を下げるホテルマンの役で、ちょい役なのに豪華なキャストでございました。

宮本さん演じる時江おばあちゃんは、孫をよく預かっていて、孫に諭すように(あるときは無礼なおばちゃん連中に、DVで傷ついたミサに)言う言葉が一つ一つ含蓄があって、格好良かったですし、かとおもえば、亡くなった旦那さんに似ている竜太を見て乙女になってしまったり。なんかここらへん、乙女とヅカと阪急電車みたいな(笑)時江おばあちゃんは絶対に宝塚にときめいた少女時代を過ごしたに違いない!とイメージしてしまいました。

ハリウッド俳優の奥さんというイメージが全くなかった南さんの伊藤さん。いや、女優は化け物です。伊藤さんみたいなお母さんだったら、あの家族はほんわかしていて楽しいだろうなぁって、チャーハン食べたくなりました。

若者陣では、彼氏のDVに悩まされるミサ役のえりかちゃん。ホントに上手い・・・そして可愛すぎる。関西弁が全然違和感ないと思ったら兵庫県出身だった。どうりで。SPECやBOSSやこの間の月9とかものすごい演技の幅がありますね。一番印象的だったのは、電車の中でおばちゃんの悪口を言っていたところのナチュラルさ(笑)いや、良かった。

地方から出てきて、なかなか神戸の色に染まれない美帆ちゃんが谷村美月ちゃんですが、この方も大阪出身だったんですね。この美帆ちゃんと圭一くんの「小さな恋の物語」もぎこちなくて、見ているこっちが照れてしまうくらい、ピュアでした。

高校三年生で、関西学院大学に入りたいのだけど、学力もさることながら、家庭の事情を考えると挑戦したくてもできなくて・・・という仲、自暴自棄になってしまって社会人の彼をホテルに誘ってしまう悦子の役の有村さんも、ぎこちなさもありながら、悩める高校生のため息が聞こえてくるようでした。

まなちゃん、地元の言葉のほうが、とっても台詞が自然でいいなぁ。当たり前なのかもしれないけど。ミサの彼の電車内での暴言に泣き出してしまうところもかつをさんったら胸が締め付けられましたよ〜。その後に時江おばあちゃんが「泣いてもいいけど、自分で泣き止むことができる女性になりなさい」というような事を言っているのもしびれましたけどね。
子役では、もう1人中谷さん演じる翔子と同じ名前の少女、翔子ちゃんを演じていた子。すっごく良かった。翔子が討ち入りの後に、電車の中で時江おばあさんに声をかけられ、抑えていたものがぷちんと切れてしまった瞬間と同じように、翔子に声をかけられ、みるみるうちに少女の目に涙が溢れてくるところの演技で胸が痛くなってしまいました。翔子が「名前も知らない人達は、私の人生に何の影響ももたらさないし、私の人生も誰にも何の影響もあたえない・・・」と思っていた時に出会った時江おばあさんのように、この少女にとって翔子が時江おばあさんになっているところに「この出会いは偶然ではない」というコピーが頭をよぎってくるのです。

ただ・・・翔子とミサって、お互い「友達になれそう」って認識するほど、翔子からミサへのアクションってなかったような気がするんだけど(おばちゃんたちにバックで妨害されたところ以外)、どっか見落としていたのでしょうか?

思いもがけず、ずいぶんと泣いちゃった映画でした。温かい気持ちになったし、世の中、そんなに悪くないかもと思えた翔子やミサのように、映画館を出た時に出会った人たちにも、そんな目線を送れるような、温かい映画でした。

追伸:相武紗季さんが友情出演していたのですが、ワンポイントだけだったのに、すごく良かったです。クールな役の方が好きだな。そして携帯を折るところも格好良すぎました。