運命の子

2012年11月23日「運命の子」@WOWOW

さらば、わが愛〜覇王別記」以来のチェン・カイコー作品。映画祭帰りで3本みた後で通して観られるか自信がなかったけど、杞憂でした。目が離せない歴史ドラマでした。ストーリーは公式サイトに記載されてるのでそちらをご覧下さい。
そういえば、宝塚星組がやった「龍星」も取り違えの話じゃなかったっけ?(あやふや)

「宰相をつとめる趙盾(ちょうじゅん)の息子、趙朔(ちょうさく)は、現君主の姉・荘姫(そうき)を妻にし、自身も将軍として勇ましく出陣する。栄華を謳歌する趙氏一族だったが、武官の屠岸賈(とがんこ)がひそかに謀叛を企てていた。彼は王殺害の罪を趙盾に着せ、その勢いに乗って趙氏一族300人を皆殺しにする。」
中国映画の時代物では戦いのシーンでのスケールの大きさが素晴らしい。この冒頭の逆恨みからの謀反で趙氏300人を惨殺する光景が凄まじかった。もちろんフィクションとして、ですよ。

医者の程嬰が40歳を過ぎて恵まれた赤ちゃん。名前を荘姫からつけてもらった希望の男の子。劇中で、お祝いの卵を配りまくる夫をたしなめる妻の台詞があって、今と違って40歳で頑張った(笑)っていう気恥ずかしさが見えるのが、この後の「運命の子」に繋がるんですよね。生まれてくるべくして生まれた子。趙一族の最後の希望を根絶やしするために城下の赤子を全部集めた時に、妻がうっかり抱いていた趙氏の孤児を差し出してしまい、それを知った時の程嬰の葛藤は胸が痛いとかそういうレベルを越えてました。

取り違えられて、公孫に匿っていた実の妻子を、僅かながらの良心を信じて屠岸賈に赤子を差しだし、自分の目の前でたたき落とされて殺され、妻も殺された痛みと、そこまでしても趙氏の孤児を守らなくてはならない忠義心とはなんなんだろうと思います。程嬰が荘姫から取り上げる場面くらいしか趙氏との絡みがないので恩義の程度が見えなかった為に、私は逆に自分の妻子への復讐の気持ちに見ていてスイッチできました。そして育てていくうちに、どんどん深まる父の愛情を子供がうっとうしく感じるところのその反目が切なかったです。また程勃が親の敵に懐くからねぇ。

程勃を育てられたのは、荘姫に懇願され、程嬰と子供を見逃した韓厥(そのために顔に傷を負い、屠岸賈に復讐をするという点で程嬰と協力し合う)がいたから。韓厥は元々屠岸賈側の人間なのに、程嬰の「自分の妻子を犠牲にしてまで趙氏の孤児を育てる」という思いに、いつしか共感していったんでしょうね。

大人になった程勃を観て、屠岸賈は趙氏の面影を見て「もしかして・・・」となるのだけど、この方も子供を亡くしたっていう設定をされていたようなので(聞き間違いでなければ)子煩悩なところをさんざん見せているだけに、憎みきれずそれが仇になったというテイでしたね。

程嬰の血を越えた深い愛、そして妻子への深い愛。その愛が、敵の臣下になってまでも復讐を果たさせた。スケールが大きい作品を見ました。

監督:チェン・カイコー
配給:角川映画 公式HP