11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち(ネタばれあり)

11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち 2012年11月18日 ベルグホール

先日亡くなった若松監督の作品ってことと、井浦新さんが三島由紀夫をやってるっていうのもあってチケット取ったもの。いや、劇場内女性が8割で驚いた。とても三島由紀夫に興味があって〜というだけではないと思うわな(苦笑)

これは1967年から市ヶ谷駐屯地での自決事件+αまでを描いたもの。撮影したものと当時の映像や写真を構成して作品にしていた。ともかく話が話、学生運動から縦の会への傾倒を徹底して描いているからいわゆる「娯楽」の要素は全くないですね(きっぱり)

一言でいうと、この時代の若者の熱がハンパない。共産主義がいいのか、皇国思想がいいのかは言いませんし、言えませんが、トークショー満島真之介さんもお話されていたように「国を良くしたいという思いがあった」ってその一言に尽きると思います。「どうにかしないとこの国は悪くなる、どうにかして良くしたい」という気持ちが全学連楯の会のメンバーも思っていたんだなと思いました。それは、ある意味、羨ましいなという気持ちも正直なところでした。

学生運動とか出てくると、年代は違うけどつかこうへいの「飛龍伝」の神林美智子を思い出してしまいますね〜。東大と楯の会が組むか否かって時に、この方々の三島とのやりとりを聞いているとあまりにも難しい原理を展開していて、難しいことを言っている人に変な畏敬の念を持ってしまいそうになりました。「すげぇな・・・」って。もし自分がその場にいて、ちょっと背中を押されたら考えなく運動に飛び込んでいってしまいそうな雰囲気を感じました。

でも、今、なぜこの作品を、三島由紀夫の生き方を描こうとしたんだろう?
多分思想的なものではないと思いますけど、どうしてなんだろうって思いました。誰が忘れても俺が覚えている、という記録的な意味なんだろうか。熱く生きろというメッセージなのか。(重ねて言うけど思想的なもの抜きでね)

主なキャストだけで申し訳ないのですが、感想を。
三島由紀夫役の井浦新さん。三島由紀夫の武士道、憂国思想へののめり込み方がこんなだったのかと驚いたのと、新さんの変容ぶりが怖いくらいでした。北野武が出演した終戦ドラマで軍服姿が似合っていたので、この役は合わない分けないと思ったとおり、軍服がはまっててカッコ良かった。その姿で市ヶ谷の駐屯地で演説をする姿が、私が後にテレビで見た三島の映像とアングルが全く同じで、高揚から絶望に変わっていく姿が痛いくらいでした。

三島と共に市ヶ谷で割腹自殺した森田必勝を満島さん。彼は目力が恐ろしくありますね〜平成元年生まれ、恐るべき24歳?ですよ。のめり込み方の点では彼が一番で、最後の切腹のシーンは本身(真剣)を使っていて「真之介は本当に切るんじゃないか」と心配されていたそうです。むしろ森田が三島を煽って行動を決起したと言ってもいいシーンでした。
彼は初めての舞台で麻実れいさんと共演し、麻美さんと友達だった寺島しのぶさんが遊びに来た縁で寺島さんが若松監督に紹介したとのこと。彼は「髪は切れるか?」「自衛隊の訓練は行けるか?」の二つの質問だけで、若松監督の面接を終えて、出演を勝ち取ったようです。カメラの前に立ったことがなかったということは、花ざかりの君たちへ、の前だったのかな?(それともドラマの出演はCOUNTしてないとか?(汗))

あと、三島の妻役で、若松監督作品の常連?となっている寺島しのぶさん。ちょっとしか出てこないし、富士山の麓の訓練地と家と最後の飲み屋しか出てこないけど、圧倒的な存在感が。しのぶ、すげぇ・・・って。三島の人生の幕引きを「どんな幕引きをするのかしら」って達観している姿が度胸座りすぎてて、恐れ入りました。三島の奥さん、どういう人だったんだろ?って「女たちの11.25」を見てみたいです。

この上映後に新さんと真之介さんのトークショーがありました。車の関係で新さんが遅れてきて前半は真之介さんが一人で話してくれました。この作品を終えてから1日の生活の時間の使い方、人との接し方が変わったというほどのインスパイアだったそうです。ちなみに若松監督は10時から15時までには撮影が終わってしまうらしく、この作品は2週間で撮影したとのこと。お二人とも、それほど大きな会場でない上映会のトークショーであったけど、すごく真摯に話をしてくれて、終わってから公式パンフレットを手渡し&サイン&握手にも応じていて・・・間近で見た真之介さんも新さんもイケメン過ぎてもう大変でした(爆)きゃ〜〜〜〜アイドル以外にときめいた(→をい)

ものすごいボリュームの公式プログラムを見て、もう一回歴史を勉強してみる価値はありますね。三島の作品もまた読んでみようと思った午後でした。

監督 若松 孝二 配給 若松プロダクション/スコーレ株式会社
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