ニュータウンの青春(ネタばれあり)

ニュータウンの青春 2012年11月6日 ユーロスペース

動機が不純で、敦子ちゃんが観たい!ってTweetしてたし、同じもの観たいっていうキモヲタ具合が何ともいえませんが、とにかく行けるときに行かないといかんってことで、渋谷のユーロスペースに行ってきました。

この映画館はミニシアター系の映画を上映してることと、渋谷というよりは比較的近いところがお気に入り。ただ辿り着くまでのホテル街と風俗の客引きにめげない限りだけどね(笑)

さて、私が到着したときには整理番号10番でしたが、間際になって客席を振り返るとほとんど埋まっていてとても21時05分からのレイトショーとは思えませんでした。上映後のトークショーがあったからかな。時間が許せばトークショー見たかったな。なんせ終わったのは22時45分とかそんな時間だったので返りばかり猛ダッシュですよ。渋谷に住みたい。

この話はニュータウン住む高校三年生と先輩との3人組の青春群像。「サヨナラだけが人生だ、いやマジで」ってコピーイメージどおり、青春のさよならとこんにちはをいったり来たりする映画でした。

映画少年のカズカズ、漢字が書けず原付の免許に落ち続けているのに試験場には原付バイクで行く同級生で実家のスナックを手伝う豪一、2年先輩で無職の飯田さんの三人は、毎日アイドルの富永さんを見るために「富永公園」と勝手に名付けたマンションの下の公園でたむろしてる。ある日富永さんがストーカーに狙われてると知り、彼女を守るために作戦を開始する。。。

女性でもあり、残念ながら男子高校生の性欲も含めた青臭いところを全面的に理解するのは難しいのですが(苦笑)何かわからないけどなんか熱くなってるって時期は永遠ではなくて、やがて終わりがくることをきちんと描いていたところが好印象。なんかもやもやして大声で叫びたくなる時ってあったよなぁ。あ、私は本当に叫んでたか、面〜〜〜ンンンン!って(笑)→違う

最初のシーンの朴訥としたモノローグを聴いたときにこれは大学生の卒業制作なのかな?と思ったのはあながち間違いではなく(森岡監督の卒業制作のようです>公式HPより)、映画少年カズカズの撮る映画の、カメラを通して見た物語にもなっていました。記録に残してるって事は今を過去として切り取ることであり、やってくる終わりも暗示しているんですかね。

最初に3人の仲の良い、じゃれ合っているような映像が続くし、富永さんという女性を通して妙に結束するし、時には飯田さんが騙されているのを諭したり軌道修正をお互いでしているのだけど、一回たがが外れてしまった思い(思い込み)の前には、他の2人はただ見ているしかなくて、そのちょっとした「これ、違うんじゃね?」というずれが終焉のチャイムなんですよね。

映画少年というと最近では「桐島、部活やめるってよ」の前田くんが頭に浮かびます。見終わった後、桐島とこの作品を比べると桐島は朝のホームルームから帰りのホームルームまでの物語、後者は放課後の物語っていう印象でした。そう、学校の及ばないところの青春。案外少年が(少女も)大人に変わっていくきっかけは学校ではなくて放課後なのかもしれないなと素朴に感じました。AKB48の制服が邪魔をする、なんてMVがそのまんま放課後でしたよね(笑)

小難しいことなしに笑えるし、クッソ下らないことに熱くなってるし(キリストの場面は猛烈におかしかった!)、女の子に浮かれている姿は純情だし、三人が富永さんに声かけられては有頂天になるところも滑稽なんだけど、でもその浮かれ具合が自分に例えたらアイドルと握手して好感触だった時の浮かれ具合となんら変わらないじゃんかっておかしかった(爆)。自分が今までしてきたこととは違うのに感覚的に「あぁ、わかる」っていう変なリアルがありました。桐島とかの「あるある感」っていうんですかね。
ストーカー男の正体が分かって急転直下するところも愛らしく、暴走しすぎてしゃれにならねぇって展開になった時の「やべぇ、でももうここから引けない・・・」っていうところのずるずるとしたどん引きする気持ちやスリルもあって、面白かったです。

監督は俳優もされている森岡龍さん。これも公式HPを見たら監督自身の青春との決別の儀式、ってふうに書かれてました。同じテイストの作品はもう書けないだろうな・・・という青春の一作でした。

監督 森岡 龍 配給 ダングラール 公式HP  予告編