エリザベート スペシャル ガラ・コンサート(東急シアターオーヴ)

2012年11月7日 東急シアターオーヴ
エリザベート スペシャル ガラ・コンサート

エリザベート」宝塚ファンには、ある意味「ベルばら」と同じ立ち位置にある位平成における名作であり代表作。私が2回目に観たのは旧東京宝塚劇場で観た雪組の「エリザベート」でした。(ちなみに初めて観たのは「花は花なり/ハイペリオン」という花組の作品・・・あぁ、年齢が・・・)

宝塚の予備知識がZEROに近い状態だったにも関わらず、その楽曲、ダンスの迫力共に「すげぇ・・・」ってのはわかったこの作品。後で当時のトップだった一路さんの退団公演だったということを知ってなるほどなと思ったのでした。東京と宝塚とでは役替わりがあったので、ルドルフはたかちゃん(和央ようか)でした。

その後、全組でこの作品は上演され、新人公演も含めて本当に多く上演されました。ガラコンサートもあり、東宝でも上演され、私は韓国で韓国俳優さんの「エリザベート」も観てきました!宝塚以外は男女で上演しているので(当たり前ですが)演出も変わり、面白かったんだけど・・・この日のガラコンサートで「あぁエリザベートはやっぱり宝塚すげぇ!」ってそう思いました。

CAST
トート 一路真輝
エリザベート 花總まり
フランツ 高嶺ふぶき
ルキーニ 轟 悠
ルドルフ 香寿たつき
ゾフィー 朱未知留
マックス 立ともみ
少年ルドルフ 望月理世
リヒテンシュタイン 秋園美緒
ルドヴィカ 絵莉千晶
ヴィンディッシュ 南海まり
ターレイ 美鳳あや
マダムヴォルフ 嘉月絵理
死刑囚の母 彩星りおん

今回現役はルキーニ役のいしぞう(轟)以外全員OG。それも現在東宝のミュージカルで主役を張っている人ばかりではありません。ただこのキャストはゾフィー以上のプリンシパルキャストは全員初演・雪組のメンバー。そしてなんと言っても今までいろんな噂がありながら、決してエリザベートの役を演じて来なかった花總まりの復活!!!これを観たかった、会いたかった、会いたかった〜〜YES!君に〜〜〜!って宝塚ファンから殴られそうですが(苦笑)本当にこのエリザベートを観たかったんです。

もちろん主役の一路さんは、東宝版でエリザベートを演じてた訳ですが、ここ一球入魂のトート。男役久しぶりですよね。それにフランツのゆきちゃん。現役の時も力が入りすぎてる、やややり過ぎなところが大好きだったゆきちゃんのフランツ。タータンのルドルフは宝塚しか出ていなかったから超貴重。ゾフィーの朱未知留さん。この人は歌が上手いエトワールでした。あぁこうやって書いているだけで、期待せずには居られなかった訳で・・・。

舞台は生オケ。ダットミュージックに西野さんの指揮。宝塚の楽団じゃなくて良かった(すまん)舞台にオケが入っていたので、オケの上に橋を渡して舞台の奥行きを使い、奥から客席側へ中央、左、右と橋を渡す。そして舞台の前に花道もどきを作っていました。奥にはリフトをセリ代わりにして、ルドルフが死んだ後など効果的に使っていました。シアターオーヴは音響も素晴らしく、また2階は(3階も?)センターがエプロンになっているので案外近く感じました。(9列目)とにかく2階にしては見やすい!という印象でした。

以前東京芸術劇場でガラコンサートをした時は、確か舞台衣装ではなく、普通のドレスで出ていたと思ったのですが、今回は「宝塚の倉庫で黄泉の世界から蘇って来た初演雪組の衣装の数々・・・!?」と言わんばかりのもので、正直衣装とか記憶が薄い私のようなもの(なんせ1回しか観てない)でも、くたびれ感がないあまりの保存状態の良さに驚いたのと、なんと言っても一幕で出てきたエリザベートのドレスの豪華さ!あれは初演の時の花總さん自前のものと言われていますが、あの圧倒的な生地の高級感(感、じゃなくて高級なんだと思う。)とボリューム=つまり「豪華」の二文字でした。

同じ作品をするにしても、東宝版と宝塚版でさえもアンサンブルの衣装まで生地の材質がつやつや、お金のかけ方が違うので、本当に宝塚の舞台はコンサートに至るまで眼福です。これがあるから非日常を味わえると言っても過言ではない。今回は一路が、花總が、高嶺が・・・っていう初演雪組チームの熱を衣装部さんが受け止めた、って禁じ得ないです(他の組み合わせの時の衣装がどうだったかぜひ知りたいところです→行けないので)全然本題に入れませんが、本題に入るまでも素晴らしかったのがこのコンサートということも言えます。

どのくらいカットされるかと思ったのですが、舞台は頭から最後まで通していました。黒天使は舞台に出てきませんし、途中歌がない芝居部分はカット。シシィの綱渡りから落ちる所とかもカット。マックス侯爵の家庭教師との浮気の場面もカット(笑)ダンスが多い部分はカット入っていました。逆にカットはそれだけだったから、休憩入れて2時間半は上演!見応え十分でしたよ。

一路さんがトートで登場した時に「史実的な印象を与えるには東宝版が正しいかもしれないとしても、概念的には宝塚版の方が向いているのかもしれない」っていう印象を持ったんだけど、それは最後まで変わらなかった。東宝版は男性トートに女性エリザベートなので一般的な概念として(死が人間を)「愛する」に着目しやすいものの、ある時はエリザベートの鏡のように対峙する死・トートは存在そのものが非現実な宝塚の男役の方が向いているんじゃないかと思いました。

というか、宝塚の方がシンプルでわかりやすく感じたってだけなのかも。トートとエリザベートは裏と表の関係で、フランツはエリザベートを愛し続けた。ゆきちゃんだからその強さがストレートに出ていたことも大きいけど、最終的にはフランツはエリザベートの自己愛の強さと戦っていたように思えてしまいました。東宝版の時には国家君主としての背景を演じながらのフランツのエリザベートに対する気持ちの変化を読み取ろうと必死だったけど、宝塚版は全編通して「(背景はいろいろあるけど)ただ、君を愛している」ってコンセプトにブレがない(笑)単純な方が圧倒的に強いんだよね。

だからといって宝塚が昔の揶揄され方で言えば「女・子供の観るモノ」という訳ではないです。宝塚という非日常の極みの場所で、そのコンセプトにあった演出としては宝塚版は最適、という意味なんです。

トートの一路さん
プリンシパルの方々はみんなですが、体を作ってきたなぁって印象。一路さんがカムバックしてからの舞台を観ていなかったので、余計にその印象が強かったです。声も出てたし、正直若干不安定さをビブラートでフォローしていた現役時代?(汗)の印象から上手くなったし、強くなったなって思いました。カツラまで含めて衣装が本当に豪華でした。ドクトル・ゼブルガーの場面で、宝塚の時だと途中からトートだとネタばれをしてしまっていたところを、かなりギリギリまで背中を向けてエリザベートを欺いて本音を引き出してたところのお芝居が絶妙でした。やっぱりこの役に対しての相当の自負心があるのがわかったし、きっちりとエリザベートと対峙しているところに引き込まれましたね。

フランツのゆきちゃん
ゆきちゃんは現役時代から役作りに関しては気合い派・・・むしろ気合い入りすぎて肩に力が入っている?くらいな人でしたが、今回登場した時に黒髪富士額が復活していたのに一人歓喜しました(笑)舞台稽古の写真では長髪なのでカツラなのか切ったのかわかりませんが、ちゃんとショートのフランツでした。歌は尻上がりに調子上げていってました。衣装的には若い頃のパンツの太さがちょっと合ってない気がしましたが、そこは目をつぶって、エリザベートが旅を続けて帰ってこない場面での短い時間での年数経過を表すメイクチェンジ。あのもみあげも健在です。若い頃より年取ったところのフランツが今回輝いていたなぁ。今回ゆきちゃんとふさちゃんの声質が喧嘩しないでぴったりだな・・・と感心しましたね。だからデュエットが新婚の頃からと夜のボートのところでは「溶け合っているのに相容れない」悲劇的な印象を持ちました。そして今でも変わらないのは、ゆきちゃんの相手役に対しての愛情!!エリザベートに手を差し出すところの間と相手を見つめる笑顔。素敵でした(うっとり)

ルキーニのいしぞう
今回ばかりは「さすが現役は違う!」としか言いようがないです。本当に素晴らしかった。てか、なんで帝劇に出ないのかなって感じの二人のうちの一人ですね(笑)もう一人はもちろんふさちゃんのエリザベートですよ。もちろん体系的にはあのままだし、若干やつれているのは煉獄にいる設定だから問題なし。客席降りしたところから舞台に戻ってのタイミングで「あ、ちょっと間を外したかな」ってなところはあったけど、それ以外はホント上手かったなぁ。いつでも高嶋兄とダブルキャストでもいいんじゃない?位で。ぜひ東宝キャストと宝塚キャストの真のドリーム公演やってみたらどうでしょうね。

ルドルフのタータン
私、タータンのルドルフを観たくてこの回を取ったと半分言い切ってもいい位、タータンのルドルフ観たかった。だからもうありがとうとしか言いようがないです。タータンもゆきちゃんと同じくメイク全般(ただし目元のブルーはなかったけど(笑))で「男役」そういう期待に応えてくれる人ですね!ルドルフは1幕幕開きと2幕しか出番ないので、ミルクの場面とか東宝ではアルバイトをしているシーンにいるかな?と探しましたが出てきませんでしたね。集中していたのかな。
やはり一番の見せ場はトートとの「闇が広がる」ルドルフは低音パートを歌っているのですが、こんなにはっきりと低音パートを意識できる「闇が広がる」はないですね(自己比)一路さんはこのコンサート徹底して表情を消したトートを作っていたのだけど「闇が広がる」の時だけは歌っている時に「わ、楽しい!」って表情が少しだけ出てた(笑)。この回通して一路さんの声のボリュームが一番大きかったのが「闇が広がる」だったと思うんですよ。この絶対の安心感ってすごいな・・・って思いました。現役中はいろいろあったかもですが(苦笑)現役の時からこの組み合わせで観たかったなぁ・・・。それにしてもこのガラコンサートのセルDVDにこの初演雪組の構成版を残さないのって損失だと思うわ。本当に損失ですよ!(ここ太字)あ、ちなみに最後キスはなくて自殺シーンでリフトで下に下がっていました。タータンの歌の舞台、また観に行きたくなったな〜。

ゾフィーの朱さん
今は舞台に出ているのかどうなのかわからないのだけど、最初は正直ちょっと声もきついのかな?って思いました。ただ、舞台が進んで行くうちに軌道修正してきたのには年の功を感じました。年とってからの部分はもうちょっと老けてもいいかなと思ったけど、まぁそれはいいか。初日明けてすぐなので、今後回数を重ねるとさらに上向きになりそうな予感がします。

マックスの立さん
プログラム見たら、今は音校の先生をしているんですね。立さんは立ち居振る舞いがもうマックスなので、できたらもう少し出番を・・・と思ったら、精神病院の場面で先生で出てきてた(笑)アルバイトありなんだ・・・。

少年ルドルフの望月さん
花組、だった子ですよね?現役の時にも大きいんじゃないか?って思っていたのだけど、今回もやっぱり大きかった。歌はハイトーン出ていたし、良かったです。ただ、ここまで雪組を揃えたなら子ルドはとうこちゃんで観たかったなというのは我が儘ですね。

リヒテンシュタインのそんちゃん
うちのお嬢さんは、リヒテンシュタインとヴィンディッシュとダブルキャストでして、私が観た回ではリヒテンシュタインでした。実際歌の場面も多いしエリザベートと一緒に出る場面もあるので、一回しか観られない私にとっては良かったかな。そんちゃんが歌っている時って大勢でいても声がわかるってのが自分の中の推しメモリなんですが(笑)今回も「あぁ、そんちゃんだ」ってわかりました(^o^)ガラコンサートといえど、芝居心を忘れない、表情たっぷりのリヒテンシュタインでした。アルバイトもたくさんしてて、精神病院ではヴァイオリン弾いてた。よ、要練習?(汗)

ルドヴィカの絵莉さん
おおお!久しぶり〜〜〜〜な感じ。ルドヴィカで来たかっ。ルドヴィカは一幕前半と最後の全員集合の部分くらいで、あとはそんちゃんと同じくいろんなところで出てました。ちょっと痩せすぎ?若干やつれちゃったみたいな感じがしました。

ターレイの美鳳さん
みっぽー、ひっさしぶりだな〜(私がミュージカルから遠ざかっていただけか)スターレイは二幕でエリザベートとおつきで旅行しているから結構出番ありました。黒天使とかマダムヴォルフのコレクションがダンサーありだったらまた違った配役だったよね。

マダムヴォルフのえりちゃん
今回は女役で出てました〜。えりちゃんは歌は全く心配ないし、マダムヴォルフでも結構きわどくやりたいことやってました(笑)素晴らしい安心感でした。いろんなところにアルバイトしていたので、それを楽しめたな。

死刑囚の母の彩星さん
ファンの方には大変申し訳ないんだけど、現役の時をあまり存じ上げてなくて・・・死刑囚の母の絶叫が素晴らしかったです。

そして最後に、最後にふさちゃん、エリザベート
プログラムによれば14年ぶり?くらいにエリザベートに出たということはもとより、ふさちゃんが表舞台に出るのって本当に久しぶり。かつエリザベートですよ、みんなが観たいと待っていたエリザベート。どうしたって期待せざるを得ないですよね。
一幕の少女のシシィの幼さ。イメージは・・・シシィの時にはうつむくことを知らない太陽で眩しそうにこれから訪れる世界を待っている感じ。ふさちゃん化粧も健康的な肌色にしてて、見た目少女になってました。歌い方も幼くできるところがスゲェェ・・・って、私正直現役時代のふさちゃんって後半あまり好きじゃなかった(苦笑)でもあまりにも「そこに、いる」のがツボにはまり、一気にふさザベートに引き込まれてしまいました。
フランツに出会い、プロポーズされてからの幸せ感が短くて、ゾフィ登場から一気に月のような雰囲気が出始めるんだけど、俯き加減や目線の流し方でぞっとする孤独感がにじみ出てる。東宝版観てた時にはトートとフランツ見てそっちの目線からエリザベートとの距離感とかエリザベートの心情を補完していたところがあったけど(まぁそれが相乗的であって正しいのかもしれないけど)今回はエリザベートだけで彼女の閉じていく社会との窓がスローモーションのように見えました。
誤解を恐れずに言えば、エリザベートとの関係性において、フランツはエリザベートに対して、シンプルに「君が必要だ」っていう愛情がゆきちゃんから全開で出ていたし、むしろそれのみって言ってもいいくらいの鉄板であるから、エリザベートの距離感が見えやすかったと思います。
トートのところで書いたけど、私はトートはエリザベート自身であると思っているので、そのやりとりを観ている時に、ずぶずぶと心の底なし沼に入っていく様子にぞぞっとしましたね。なんだろ、宝塚版の演出なんだけど、よりタイトルロールが立っているというか。
カーテンコールの時に登場してきて、一瞬動きが止まり、振り返る時のその横顔からの神々しさ・・・肖像画エリザベートに一瞬会場の息が止まるのを感じました。衣装も凄かった・・・ふさちゃんの衣装はどれもこれも質感がエクセレント過ぎて!こういうのを目の保養というのだと言葉の意味を理解しましたよ。
おかしい!私、こんなにふさちゃん好きじゃなかったけど(苦笑)やっぱりすごいものは凄いと言うしかない。ふさちゃんはやっぱり宝塚100年に一度のトップ娘役だったし、エリザベート役者だと思うわ。東宝で観たい、是非観たい。っていうか、次は絶対に配役するよね、小池先生。

ってことで、うっとうしく書くくらいの素晴らしいステージ。
いろいろキャストはありますが、この組み合わせを目撃できたのは本当に貴重でした。これから後半の公演、そして梅田での公演、時間があれば行きたかった!やっぱりDVD買っちゃうかもしれないけど・・・でもなんでこの初演雪組バージョンを残さないんだよ〜〜〜(大事なことだから二度目)

キャストの皆さん、ありがとうございました!