The Wiz〜オズの魔法使い〜(ネタばれ注意)

THE WIZ ウィズ〜オズの魔法使い〜 2012年9月29日 KAAT

これから東京で長い公演があるので、ネタばれが含まれていて、お芝居の初日明けに観た、ということを含み置いて以下、読んでいただければと思います。宮本亜門さんの作品は、スウィーニー・トッドトゥーランドットグレイ・ガーデンズしか観たことないです。あと、AKB48のメンバーが出ているからって諸手を挙げての話はしてないので、念のため。


ドロシー:増田有華AKB48
カカシ:ISSA
ブリキ男:良知真次
弱虫ライオン:エハラマサヒロ
西の悪い魔女・イヴリーン:森公美子
南の善い魔女・グリンダ:小柳ゆき
黄色い道の案内人:ジョンテモーニング
北の善い魔女・アダバール:瀬戸カトリーヌ
エメラルドシティの門番:吉田メタル
ウィズ:陣内孝則
翻訳・演出:宮本亜門

主役のドロシーをAKB48から選ぶってことになり、AKB48ファンの中では早い時期からかなり盛り上がっていたウィズ。最終的にオーディションを勝ち抜いたのはゆったんで、これに全力投球するために、東京ドームのコンサートもじゃんけん大会も辞退することになった。
そのゆったんのドロシーと、久しぶりの亜門作品を観に、KAAT(神奈川芸術劇場)へ行った。チケット代が安いんですよ、国際フォーラムより(笑)そして劇場がとても見やすくて、どこからでも見やすい素敵な劇場なのです。

オズの魔法使いの話は、子供の頃に読んだくらいで、すっかり物語を忘れてしまっていたけど「OVER THE RAINBOW」はさすがに名曲だし、この歌は好きだったなぁ〜〜〜なんて思っていったけど、あ、歌ってないよ(苦笑)。オズの魔法使いと言ってもいろいろバージョンあるのか「ウィズ」だったか・・・そんな程度の浅い知識でしかなかったのです。ちなみに劇団四季ウィキッドも観てなかった。

物語はすごくシンプルで、おばさん夫婦に育てられているドロシーが嵐の夜に竜巻に巻き込まれてオズの国へ飛ばされてしまい、そこで出会った脳みそのないカカシ、心のないブリキ男、弱虫ライオンと一緒にエメラルドシティに住むウィズ、願いを叶えてくれるというウィズに会いに行くって話。北の善い魔女のアダバールから「絶対に他の人に渡してはならない」と言われてもらった銀の靴を履いて。勇気を持って機転を利かせてウィズに会うのだけど、彼は魔法が使える訳でもなく、ドロシーと同じように気球に乗った時にオズの国へ迷い込んでしまったという人間だった・・・果たしてドロシーは元の家に戻れるのか?

ゆったんが想像以上に歌えていて、踊れていてびっくりした。声量もあったし、何よりずっと笑顔で、フォロワーさんが「太陽みたいだった」と呟いていたけど、本当に太陽みたいな輝きがあって、シンボリックになっていたと思う。太陽は「目印」だからね。隣に座っていた一般のお客様も「歌えているね」って褒めてました。

ただ、全体的な話をしてしまうと・・・ちょっと物足りない感じが否めなかった。舞台は生ものなんで、KAATの後に梅田で公演して、国際フォーラムではもっとバージョンアップしていると思うんだけど、この回を観た私には物足りなかった。

舞台装置がそれほどお金を掛けていないということとか、衣装が1着で済んでしまっているとかそういうことじゃなくて、「信じること」っていうキーワードが全編通して薄まってしまっていたんじゃないかなって思ってしまった。

最後に、ウィズは「信じること」の大切さを語り、かかしには脳みそを、ブリキ男には心を、弱虫ライオンには勇気をあげたんだけど(あげたと言ってもウィズもただの人間なんだから、本物をあげた訳じゃないよね。)、なんかそこが非常にとってつけたような印象を持ってしまったのだ。物語だよなぁって思ってしまった。なんか盛大に嘘をついて欲しかった、と言うべきかもしれない。

だって、すでに道々でドロシー達が遭ってきた困難に、彼らは考えて魔女と戦ってきた訳だし、思いやりや勇気を持っているから、ドロシーを家に帰してあがようって力を合わせるんでしょ。すでに持っていたものなのに「自分にはそれがある、できる」って思えなかったことに、気づく。そのことをもっとウィズがもっと諭して気づかせて欲しかったのだけど、残念ながら陣内ウィズからはそれが感じられなかった。

陣内さん、アドリブをちょいちょい入れる色気を出しすぎてしまって、策におぼれた感じがあるんだよ。「エリザベート」の時の山口トートみたいな感じ。もう遊び過ぎちゃって、ウィズじゃなくて「陣内さん」だった。キャラクターから外れてしまうという・・・。個人的な意見では、この役は市村さんがやったらもっと違って感じていたと思う。

キャストが非常に豪華で、豪華なのに、座長(この場合の座長ってゆったんなのか、最後に紹介された陣内さんなのかわからないけど)に集中していなかった感じがあった。みんなが出来るから散漫になってしまったという印象かな。

アンサンブルのダンサーさんのLevelは高いし、非常に見応えがあったのと、ジョンテさんのダンスがずば抜けていて圧倒。ISSAさんはストリート系ですが、ブリキ男の良知さんはピルエットが綺麗だなぁと思って略歴みたら劇団四季出身の人だったのね。ダンスの質が違っていました。

門番の吉田さん、アダバールの瀬戸さん、イヴリーンの森さんあたりはもう間違いない仕事をしていましたね。安定です。ライオンのエハラさんが芸人の域を超えていました。

まぁ、亜門さんが「楽しんじゃおうよ!」って言いながら演出してそうだなぁと思ってみてました。あとね、最後にスタンディングを強要するようなカーテンコールの仕方はどうかなと思いました。そこまで自分はエモれなかったです。

う〜ん、どう解釈すればいいのかわからないけど、ネズミの国を信じられない自分はダメなのかな?(苦笑)でもゆったんは、間違いなくこの作品を名刺代わりにして外に出て行けるのではないかと思いました。

東京でのバージョンアップどうなるか!観た方の感想を読むのが楽しみです。