桐島、部活やめるってよ(ネタばれあり)

桐島、部活やめるってよ 2012年9月19日(水)横浜ブルク13(ネタばれ注意)

原作を読んでいない、あらすじを読まないで観ました。(あ、エクスキューズ出してしまった。)
あまりにもTwitterのフォロワーさんの感想が、評判が良くて、これは観てみなくてはと。普段あんまり邦画を映画館で観ないのですが、水曜日レディースデーでGO!

公式ページの物語紹介を一部引用すると、
事実1 桐島はバレー部のキャプテンだった。
事実2 桐島は成績も優秀だった。
事実3 桐島の彼女は校内一の人気女子だった。
事実4 桐島は金曜日に突然部活をやめた。
それ以外のことを、僕たちは何も知らない。

金曜日に桐島が部活を突然辞めて姿を見せなくなってから、火曜日に桐島が学校に来るという噂が流れるまでの5日間。時期が夏じゃなくて、冬だったのが良かった。寒いと人恋しいもんね(笑)
今高校生の子たちも、昔高校生だった人たちも、これはリアル過ぎるだろ〜〜〜って思った人、多いんじゃないかな。私ももちろん、その一人。
鑑賞後の感想の一言は、最後の宏樹のシーンでやってきた。
「つながっていたい」
高校生たちの「俺達(私たち)つながっている・・・よね?」っていう感情がタイトロープになっていた作品でした。

桐島の親友でありながら、桐島が部活を辞める原因も本人と連絡も取れなくなっていた宏樹。野球部に属してはいるものの練習にも試合にも参加しなくなっていた宏樹が、キャプテンに試合に参加できると言い出そうにも「見に来るだけでいいからさ」と目の前で白線を引かれてしまう。そして屋上で桐島に会うこともできず、前田の「好きな映画と自分とがつながっている気がしてね」というてらいの無い言葉に泣き出して、もう一度桐島に電話をかけてもただ呼び出し音が鳴り続け、目の前にはもう入っていけない野球部の練習風景が広がる・・・。「つながってない」事への呆然とした自覚が最後の最後に爆発していたように思いました。

実際、台詞を聞いていると、校内で会話する女子高生の会話では、はっきりとモノを言おうとする前や後に「ゴメンゴメン」「大丈夫」というどっちにも取れるような曖昧さを残しておきながら本音を話していたし、なんとなく関係性があるところでの微妙なバランスを崩したくないから、見えない上位下位を崩さず、決して全部本音を話すことはしない。もちろんグループが同じと思われたくないっていう意識の中で態度を使い分けることも忘れない。かすみの「女子の関係は難しい」の言葉はそれそのものじゃんかと思いました。

そういう感情を、登場人物のフォーカスを変えて、同じ場面を複数回出してくる演出が、最初は戸惑ったけど、何日か観ているとかえって心地よくなっていた不思議。同じ場面なのに、結果的にみんな「つながりを求めている」で繋がっているところがあったから、集中力を欠くことがなかった。同じシーンを何テイクも撮っているんだろうけど、演技のブレがなくて同じタイミングで何台もカメラを回しているのかと思ったくらい。一体どうやって撮っているの!?

それにしても、リアルなんだよなぁ。自分の場合は、剣道部で(もちろん、映画のように部室の中で面をかぶるようなことはしてませんし、しませんよ(笑))、女子バドミントン部と同じ部室。4畳半くらいしかないのに、恐ろしい人数入っていて、おまけに防具とかバドミントンのネットとかもあったりするという・・・でも、そこでお菓子食べながら授業サボったりしたこともあったよなぁ。野球部とかラグビー部とかバスケ部とかは力があったからちゃんと部室一つ貰えたし、生徒会費とかも一杯使えて羨ましかった・・・っていうね。なんかこういうヒエラルキーって変わってないのかな。

部活では部長でそれなりに経験者だったけど、クラスの中では圧倒的に印象薄くて、キャストから選べと言われたら沢島系だったよなぁって(あ、もちろん立ち位置ですよ)誰かの自分をおいてみるのも楽しめる映画だと思う。きっと誰かに重なる部分があるんじゃないかと思いますね。

キャストで印象的だったのは、
前田くんの神木くん。このひより具合が何とも言えない。走り方、歩き方がちょっと内股で、運動音痴。いやーSPECの彼と同じとは思えませんね(笑)何より台詞の間が良くて、同じ映画部の武文との会話では映画館沸いてました。映画が好きで、秘宝とか読んじゃっていて、私途中から前田くんを女性の役にして映画大好きな敦子ちゃん(前田敦子)が演じたら面白くないか?って思い始めたらもう敦子ちゃんに見えて仕方なかった・・・単なるあつヲタでした(苦笑)。ちなみに私、8ミリカメラ持っています(使えないけど)

宏樹の東出くん。この作品が本格的な俳優デビューみたいですね。モデル出身とか。面影が若い頃の妻夫木くんに似ているなぁって思って観ていました。感情が出ないような役だったのか、あまり初めてっていう印象がなく、格好いいなぁって思って見てました。(単に好みか)これからどんどん出てきそうな感じですね。

かすみ役の橋本愛ちゃん。もうすっとした表情、綺麗だった〜。黒木メイサかと思った。面影が似ている。でも圧倒的な印象がありますね。バドミントン部で成績もそこそこ良くて仲のいい実果(お姉さんが自殺したのか?)からうらやましがられたりしているんだけど、特段目立つこともせず、目立つグループには属しているという・・・。すごく存在感があるなって印象でした。

それとやっぱり吹奏楽部の沢島さんですよ。大後寿々花さんですよ。途中からもうさや姉(山本彩)にしか見えなくなっていた〜〜〜。顔の印象が似てる〜〜〜と一人で大騒ぎしていました。でも彼女の行動こそが本音のところの女子高生っぽいよなぁって思ってしまったんだよね。憧れていた宏樹が彼女と激しくキスしているところを見てしまって動揺するんだけど、吹奏楽部という自分の居場所に戻り、ワーグナーを演奏している中で自分がつながっていることで充実感を得るという・・・この挫折と一歩が心地よかったです。

多分もっともっと深く語れる作品だと思うんだけど、とにかく今は「うわぁ、高校生やり直してみたい」って思って、悔しくなってます。終わるまでにもう一回観たい作品でした。