宙組「カサブランカ」

宙組カサブランカ」新トップコンビの大劇場公演お披露目で、世界初「カサブランカ」ミュージカル化。
演出は小池先生という「劇団力入れたね〜」的なこの公演を東宝まで見に行きました。最初に言ってしまうと、超有名な映画であるにもかかわらず、このワタクシ映画を見たことがありません。もちろん世紀の名訳「君の瞳に乾杯」とかは知っていましたけど。そんな状況なので、チケット取りものほほんとしていたのですが、ふたを開けたら結構大変でありがたくも譲っていただいたのです。
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月組時代のゆうひくん(大空祐飛)を知っているだけに、トップになるとはというのが正直な感想ですが、今回のリックという影のある男はとても合っていたと思いました。太陽でできる影というより、満月の時の月影って感じでしょうか。リックが正義のためとはいえ武器商人の片棒を担ぎ、アメリカへ再入国禁止されているという背景も違和感なかったです。そして本当に愛した女性イルザが、自分を愛していることを知っていて、彼女が生涯良心の呵責に苦しまないように、そしてリックを愛した思い出を憎まないように、夫と共にカサブランカから逃がしてやるという、ものすごく懐の深く愛を胸に秘めた男を演じていたと思います。THE LAST PARTYといい、HOLLYWOOD LOVERといい、古きアメリカの影のある男の役が結構はまりますね。

イルザの野々すみ花さんをまともに認識するのは初めてだと思うんですが、檀ちゃんを小っちゃくしたような感じですかね。お芝居は上手いと思いました。イルザ以外の準ヒロインが、一応純矢ちとせちゃんあたりになるんだと思うんだけど、名前は知らなくてもパッと目に飛び込んでくる娘役がいなかったので(役が男役メインだったせいもあるけど)、間違いなくヒロインだということがわかりました(をい)イルザは夫ともリックともどっちも本当に愛していたんだろうに、ラズロへの愛がちょっとあっさりしていたような気がするんですが・・・だから私は葛藤がちょっと鈍く感じたのでした。

ラズロの蘭とむ。ラズロって、収容所から脱獄して逃げ延びて地下活動しているような人なんだよね。地下活動な雰囲気というよりかっこいいダンスリーダーだったような・・・。原作のイメージもこんなにクールな人だったのかな。リックとの対比させるなら、もう少し激しくても私は好き。リックとの絵面が良かっただけに。蘭とむはこういう細かい感情のある役だと、感情がこもりすぎて表情が平面になってしまうのが残念です。

警視総監ルノー大尉のみっちゃん。こんなに胴布団を入れる役を3番手にやらせるのか!?と思いましたけど、リックとの掛け合いや、ドイツ軍とのしたたかなやりとりや、最後のリックと友情の場面も良かったです。一幕最後で、シュトラッサー少佐とのテーブルでものすごく不快な表情をするところにうなってしまった。あまりに上手く演じすぎて、脇役になってしまうのが怖いけど、みっちゃんはラズロよりルノー大尉で見られて良かったです。

シュトラッサー少佐のともちんは、めっちゃ悪役キャラが似合っていて良かった。(って言っていいのか)前に「バレンシアの熱い花」でも悪役キャラだった(と思うのだが)けど、憎々しくてリックとの掛け合いが効果的でした。
ソルさんのフェラーリはさすがの専科様だし、萬ケイさんのサムは、小池先生の愛がたくさん詰まっていて見ているだけで泣けた。と言いながら最初「チャルさんか?」と思ってしまったのも事実なんですけど。
あ、純矢ちとせちゃんは、最後のショー部分で一瞬たっちんかと思った。お芝居では雪組だと晴華みどり的な役回りになっているような気がするんだけど、前からそうだったっけ?

小池先生の演出は、細かいところまで生徒をちゃんと使っていて(娘役が気の毒な作品でしたが)、下級生も意味ある群舞に参加していたのが印象的。小池先生だから「下級生=人間大道具」にならないですんだんだと思います。そして時間経過と場面転換のときに使う盆回しと大ぜりのうまさ。自然なんだよねぇ。加えてバックに流す映像が、ぐるぐるとリックの頭の中で回る回想とダブって集中力が切れなかったです。あと、意外にも台詞のところどころに韻を踏んでいるのにも今回気がつきました。ドイツ軍を見せた後に「どいつもこいつも」とかね。

久しぶりにいい作品を見たなぁ。映画も見てみよ(笑)