宙組「維新回天・竜馬伝!」「ザ・クラシック」(東京宝塚劇場)

2007年01月06日 宙組「維新回天・竜馬伝!」−硬派・坂本竜馬?−/「ザ・クラシック」−I LOVE CHOPIN−(東京宝塚劇場

「維新回天・竜馬伝!」
宙組三代目トップスターのかしげちゃん(貴城けい)とコンビを組む紫城るいちゃんとの大劇場お披露目作品であり、さよなら公演となった作品を見に行ってきた。最近こういう短いコンビが多いのは非常に残念である。劇団は計画的に人材育成しているようで、場当たり的で全く考えていないんじゃないか?と思うから、もうやむを得ないのかもしれないが。なぜリピーターがいたのかをわかったうえでの所行ならば、劇団としてはもう末期的なのかもしれないですね。

さて、公演の演目は見ての通りの竜馬で、作・演出は石田先生。昔花組真矢みきさんが主演し、ドラマシティで上演した作品である。元々30人程度の人数で十分収まっていたものを、尺を短くしてなおかつ出演者数が増えているわけであるから、当然一人あたりの場面数は少なくなり、中身はすかすかになってしまうだろうと想像に易い。それをさよなら公演でやってしまうのはいかがなものか?と思うが、退団と作品のどっちが先だったのか。正直言えば私が応援してきた人がトップスターになったとして、この作品でやめるならファンとして成仏できないと思う。

石田先生の竜馬は、日本の国内の領土の中で一国一城の主で満足しているような藩主たちを豪快に笑い飛ばし、土佐人でもなく「日本人」としてこの国の行く先を憂い、未来を見つめて行く男であるが、そういうところを正面から描いていないのが非常に不満である。ちょっとエッチでお調子もので憎めないところがある・・・それが「男」なんだよ的なものがどの作品にもあって、私は飽きている。というか、そんなところで照れてお茶を濁す姿勢が好きではない。非日常の舞台の上で、日常的にありそうなそんなの見せられてもどうしろっていうの?という気持ちになってしまうのだ。本質的には、日常に絶対いないような紳士を演じることが似合っているかしげちゃんなのに、日常どこにでもいそうな男を演じているのが気の毒でならなかった。(本人はどう思っているかは知らないけど。)頑張っているだけに見ていて痛々しい。というか、これ笑えるか?

中村A先生や「放浪記」も真っ青な、場面転換の度の暗転と幕前芝居。あんまり暗転が多くて眠気を誘う。セットにももう少しお金をかけてあげたいよね。竜馬はともかく、お竜なんて最初から最後まで1着だったんじゃないかな。。。あ、白無垢があったか(って最後じゃん!)

タカーハナがいたときには、娘役にはもれなく役がない作品が続いていたものの、今回は宙組若手男役が活躍する場がほとんどない作品だった。組替え組はご祝儀的な意味合いがあるのか場面が多い役をあてられていたが、台詞が一言あればいい方で、若手ファンも気の毒だ。帰りに若手スターのファンおばさま二人組が「場面が2場面しかなかった!」と怒っていたが、台詞は無くてもしどころのある作品だったら果たしてこういう感想は出るだろうか?

ウメが次のトップとなるので、微妙になったまちゃみや和音ちゃんやアリス(最近まひるに似てきたような気がする。)も微妙。ただ、まちゃみにはぜひ「心中・恋の大和路」をやって欲しい!と見てて思った。相手役は・・・う〜ん、こういう役だったらかしげちゃんいいかもって思うんだけど。

お金払っているだから・・・石田先生、久しぶりに大劇場を担当するならもっと練った新作でどうかお願いします。焼き回しではなく。(ただ、編成会議で通ったんだから、会議そのものもどういう基準なのだろう。謎ですね。)

「ザ・クラシック」
始まりはベートーベンの「運命」で、かぶいた5人組が出てきたなぁと思ったら草野先生か。お約束のおじいさん・おばあさんネタあり、女装あり、おカマ系ありと、パターンどおりでワクワク感はない。音楽はショパンを使っていたのかもしれないが、基本がクラシックなんだから3分や4分で起承転結サビがあるわけでもなし、結構淡々とした印象があった。

クラシックのいいところ、クラシックが似合うかしげちゃん・・・と言いたいのだろうけど、振り付けまでクラシックにすることないんじゃないかな?誰ですか、メインの振り付けは?ものすごく全体的にレトロな匂いがしたんですけど。

草野先生は、星組の「ヘミングウェイ・レビュー」は一人の人物の人生をレビューの中で描くパターンでうまいなぁと思ったのだが、その後、失速してしまっている感がある。そこで受けたパターンを同じように使っているとしか思えないのだ。たとえば、ヘミングウェイが死んだ後に展開された天国のような場面でのダンスも、今回同じような妖精っぽい人たちのダンスとなって出てきていたし、次が読めてしまうから興味が半減する。そういえば、サザンクロス・レビューも同じだから、そういう意味ではヘミングウェイ以前から同じだったのか。

とにかく印象に残る場面、「このショーを、この場面ならもう一回みたい!」と思うものがなかった。さよなら公演だからかしげちゃんをもう一回みたいけど、このショーはもう一回みなくてもいい、と思えてしまったのだ。

本当は宝塚でもつまらないという作品は見なければいいんだろうけど、生徒のファンは義侠心もあるだろうし、無理矢理回数通っている人も多いんじゃないだろうか。たまには観客に生徒ではなく「作品」に対するアンケートを取って編成に反映するようなことをしてもいいんじゃないかなぁ。一介の劇団なんだし。どこの劇団だってやっていることじゃないんだろうか。

かしげちゃん、るいちゃんお疲れ様でした。