La Esperanza−いつか叶う−/TAKARAZUKA舞夢!

2004年11月06 花組「La Esperanza−いつか叶う−/TAKARAZUKA舞夢!」

友の会に外れたのもありますが、もろもろの事情もあり、この公演が初見で最後でありましたので、じっくり見てきました「La Esperanza−いつか叶う−/TAKARAZUKA舞夢!」。90周年の特出は、宙組のミズ(水)と月組のきりやん(霧矢)でした。制作発表の時のきりやんは、顔がぷっくりしていて体調がよくなさそうな感じがしたので大丈夫かいな?と思っていましたが、舞台で見た限り、かなり調子よさそうでした。(もちろん、発病前とは同じと言えませんが)

芝居は正塚先生、ショーは藤井先生の作品で、ショーでは元X-JAPAN(なぜか小室哲哉とのユニットのコトは触れられていないのが、微妙なネームバリューの違いでしょうか?)のyoshikiが作曲した歌が使われているということで、公演前から前評判があった作品です。

「La Esperanza−いつか叶う−」は、
一流のタンゴダンサーを目指すカルロスが、楽団付ダンサーのオーディションを受けようとするが、自分の兄の抗争にパートナーが巻き込まれ、挫折。そんな時、折りしもカルロスの働いている店で偶然出会い意気投合した画家志望のミルバも、師匠から出典を拒否され挫折。自分の夢が叶ったら会おうと約束していた期日に二人は現れたものの、お互いが挫折したことを知り、いつかはペンギンを見に行こうという約束をして、新しい生活に踏み出していった。
カルロスは、パートナー・フラスキータが膝を撃たれてしまった一件で、ファビエルの店をやめて、ホテルで働き始めていた。ミルバは遊園地の補修係として働いている。フラスキータは復活したものの、プロとしてのダンサーの道は閉ざされ、インストラクターとして出直す決意をしていた。
カルロスのところへ、かつてのライバルであったダンサーのベニートがやってくる。一緒に働いているフアンに才能を感じたカルロスは、ベニートに彼へレッスンをすることを伝える。
一年後、フアンはコンテストに出場し、最終選考まで残る。しかし、心臓に疾患を持っていたことを隠していたファンは倒れてしまった。ファンの頼みで、カルロスは彼の代わりに踊ることになり・・・。

っていう話なんですが(あらすじの詳細は、Webや歌劇・プログラムでご確認ください)、ちょっと辛口かましていいですか。
「で、それから?」
っていうのが正直な感想でした。あの〜本当に何が言いたいのか見えないというか、この間の柴田先生の時も「う〜ん、これでいいのか?」と思うところもありましたが、それ以上に「そんなんでいいのか?」と言いたい作品でした。

どんなところがかつを的NGだったかというと、3つありますね。
1つ目には、まともにドラマに絡む人が少なすぎて、大劇場クラスじゃない。
2つ目には、物語がキャストに邪魔されてしまっている。
3つ目には、これ、花組でやる設定の作品か?
というものです。

1つめの「まともにドラマに絡む人が少なすぎて、大劇場クラスじゃない。」というもの。

最近の大劇場作品に共通して言えることですが、台詞のある人が少ない、舞台に出ているのか1〜4人ってこと多いと思いませんか。仮に台詞がなくてもドラマの中で主人公と関わりあう、物語のキーになる人っていうのが少なくて、新人公演の時に勉強になるのだろうか、と思うことが多いのです。この作品もせっかく特出で水(ベニート)やきりやん(ファビエル)が出ているのに、主人公に絡むどころか、殆どちょい役です。だってベニートなんてカルロスのライバルだけど、ライバルがライバルたる「競争」「嫉妬」みたいなものは全然書かれていないし、簡単に同情しちゃったり、応援しちゃったりして、ぬるい感じがありありでした。男役で二番目に書かれる以上、ライバルならライバルとしての競い合いがあり、戦った中での友情を描くのが今までの正塚先生の作品だったように思うのです。そういったものが全くなかったです。
それはきりやんでも同じ。きりやんのファビエルという役は、カルロスのパートナーであるフラスキータ(遠野)を愛していて、カルロスを愛しているフラスキータにある意味ライバル心もあったりする役所です。カルロスもフラスキータを愛していたら単純なラブストーリーになってしまうから、あえてそっけない設定にしたとしても、自分の兄の抗争に巻き込まれダンサー生命を落としてしまうきっかけになったのなら、もう少しフラスキータに同情と責任とから少しくらい愛があってもいいんじゃないかと思うんですよ。その中で、本当はミルバを愛し始めているのにフラスキータも捨てられないカルロスと、フラスキータを愛しているファビエルと、カルロスを愛しているフラスキータと三角関係を見せてくれた方がよっぽど面白いのに、と思いました。こんな風に書き込みが浅い重要な役どころで、特出の意味があるんだろうか?とさえ思うような設定でした。これ、ドラマシティで十分な話じゃないっすかね。
だから殆どが通行人とかそんな感じで、ゆみこちゃんの学年でさえ、今更そんな役やっている場合じゃないだろう?って感じだし。(ネイキッドシティとのギャップ150%)
挙句の果てには、カルロスたちの話は、マイケルという往年の名映画俳優のドキュメンタリーを作るという設定での、劇中劇チックな設定にされているし。ドキュメンタリーにすることで、よりリアリティのない物語にしてしまったのだと思います。結局「そんなに上手くいくわけないじゃん、物語だよ物語」っていう逆説的なリアリティさえあるような・・・斜めに観ればそんな感じもあったりします。正塚先生、やる気あったんでしょうか。(あわわ)


2つ目には、「物語がキャストに邪魔されてしまっている。」ってことです。

これ、もしもあすかちゃんのようなWヒロイン的ポジションにいる娘役さんがいなかったら、ミルバって役が存在しなかったんじゃないかと思います。それは1つ目のところでも書きましたが、無理やりドラマシティあたりでやろうとしていたことを大劇場に拡大したような印象があるから。ミルバの存在ってどういう意味があるんだろうかってのが今だによくわかりません。お互い励ましあって生きていく存在?そんなぬるいことやっているような年齢じゃないんじゃないですかねぇ。少なくともタンゴで生活しているような人だったら。
それと、特出を2人じゃなくて、1人でも十分いけたんじゃないですかね。2人出してしまったことで、同じくらいのウェイトを出さなくてはいけないとか制約が増えてしまって、かえって物語が窒息してしまった感が否めません。

3つ目には、「これ、花組でやる設定の作品か?」ってことです。

少なくともタンゴダンサーの時点で、コムちゃん、フラスキータの段階でまーちゃんが浮かんで脳内変換開始しておりました。以下、変換結果。
カルロス=コムちゃん
フラスキータ=まーちゃん
ファビエル=かしげ
ニート=あさこ(←勝手に特出依頼)
トム(フラスキータの兄に設定変更)=そうちゃん
ミルバ(カルロスの妹)=となみちゃん
フアン(カルロスの教え子)=けいちゃん
ゴメス(マフィアのボスに設定変更)=ハマコ

でもって話は、
・カルロスとフラスキータはタンゴのパートナーである。
・フラスキータは、カルロスを愛していた。
・カルロスはフラスキータをパートナー以上には思っていないと思っていた。
・カルロスの店には、カルロスと双璧をなすベニートがいた。
・そのカルロスとベニートを雇っているのが、ファビエルだった。
・ファビエルは昔名うてのダンサーだったが、賭けコンテストがばれてしまい、ダンサーから は足を洗った。今では父の事業を継いだ。
・ベニートはカルロスのパートナー・フラスキータを愛していたが、全く思いは通じていなかった。
・あるコンテストの前に、カルロスの妹で、フラスキータも妹のように可愛がっているミルバが、ゴメスによってさらわれる。
・どうしてもコンテストに勝ちたいベニートが、前々から付き合いのあったゴメスに頼んで誘拐してもらったのだ。
・ゴメスは、ミルバを返してもらいたければフラスキータとのコンビは解消しろと迫る。
・貧乏な生活から脱出するためには、どうしてもフラスキータとのコンビが必要だが・・・と悩むカルロス
などなど、妄想果てしなく。

花組であっても、かつてヤンさんがいた頃のようなメンバーとは違うし、トップのキャラクターも全然違うし、正塚先生の作風とは今ひとつ合わないっす。例えばチャーリーがいる花組、クールビューティでダンスもクールな人なら、ナオちゃん以下のメンバーとなんとなく雰囲気が出そうだけど、ちょっと今のメンバーでは作風が合わないんじゃないかと思うのです。

最後にカルロスはダンス界にめでたく復帰できて、ミルバは絵でも復帰できそうで、一緒にペンギンを見に行って「やっぱり思いは叶うね」なんていわれても、かなりご都合主義的な思いが否めない公演でした。

個人的にキャストへの感想として

カルロスのオサ
どの場面でも同じ台詞の言い方や動きで、正塚先生のナチュラルな男役から遠くなってしまった。大芝居過ぎる気がする。歌い上げすぎてしまって、場面と違和感が。

ミルバのふーちゃん
立ち姿にインパクトが薄い。歩き方がきれいじゃないのですが、前からこんな感じでしたっけ?それとも画家志望のハングリーな娘って設定の上で?画家志望以外の背景が見えません。

ニートの水
きりやんともどもお気の毒な役でした。コミカルパートで、笑いを誘っていたのはよかったけど(雪組の中日公演に引き続き)、特出する意味ってものがもっとあるような書き様があるでしょうよ>正塚先生

ファビエルのきりやん
すでに書きましたけど、ドラマシティなら間違いなくこの役が主役のライバル役じゃないですかね。物足りないです。葛藤が中途半端でした。

マイケルのマヤさん
このような狂言回しにマヤさんを出すなら、月組の今やっているバウとかでマックス役で観たかったよ。

フアンのゆみこちゃんと、アンヘルのみわっち
バウがよかっただけに、もう少し配慮のある役で見たかった。

トムのトム
う〜ん、気の毒ですが、ある意味、石田先生の作品に出てくる現代人若者カップルのような使われ方でした。

フラスキータのあすかちゃん。
もう少し立ち入ってカルロスとの関係を見たかったですね。フラスキータもフラストレーションたまってしまう!?

退団される、アニキ(矢吹)とはっぱちゃん。
アニキに関しては、こういうギャグキャラでいいのか?>正塚!と憤りが。もっと男らしく渋く終わらせたい・・・それが美学じゃないの。
はっぱちゃんは、さすがに間がいいというか、笑わせるところのツボを押さえているというか。残念ですね。こういう巧い人がいなくなるのは。

個人的に面白かった人・目に留まった人
まっつ
ああいう小芝居が上手い。
そのか
台詞をもらえてよかった。笑い担当のニューカマー?
花野じゅりあさん
二回目のコンテストでそのかとダンスしている時に「お!」と思いましたが、足がめちゃくちゃ長いし、ダンス上手いですよね。オサともショーで組んでいませんでしたか?

■■■ TAKARAZUKA 舞夢 ■■■

神話をモチーフにした作品でした。宝塚も神話になるような羽ばたきを!ってところもあるんでしょうが、う〜ん、神話であることの意味って何?

神話であるから、もっとストーリー性があるのかと思ったものの、意外にストーリーが流れない感じがしましたね。

宝塚側の作曲陣はどんなメンバーだったんでしょうか。(プログラム未購入)なんとなく言葉と曲とが合わないし、ノリが微妙。それでも拍手をちゃんと入れるのは花組のすごさでありました。
ゼウスがいろんな愛を振りまくっていう設定からゆみこちゃんに「不倫は文化」なんていわせてしまうなんて、「監修:石田純一」かと思いましたよ(苦笑)。

花組+特出の2人の場面を前に出していたから、トップコンビの場面が思ったよりなくて、印象が薄いです。一番気に入ったのは、多分12場〜14場だと思うのですが、タキシード姿の男役総出で、アニキとゆみこちゃんが歌いだす「ガッチャ!」の場面。こういうアニキが観たいんですよ!と。ところで、男役のダンスという点で見ると、ここの総踊りって揃わないほうがカッコいいんですか?タキシードのダンスがばりっと揃うほうが私は好きなんだけど、ある程度バラバラの方が雰囲気が出るって感じなのか、よくわかりませんでした。

最近の花のショーとかレビューってオサが唄いっぱなしで、ワンマンショー化しつつあるような危惧があります。もっと下級生にも場を与えないと勿体ないんじゃないかしら。
反対にダンスでは、下級生が前に出てきていいんですけど。ガイアとウラノスの二人は同期で新公卒業学年で、ダンス巧者ですしね。(ま、そのかについては、ガッチャ!のところでタキシードで踊って欲しかった。)娘役も若い人が出てきて顔はわかりませんが、勢いがよくて満足。ポイントではとしこちゃんが出てきて抑えるわよってのもあり、バランスがある程度ありますよね。

芝居・ショー共に自分の中では消化不良な部分が残った公演でした。