劇団ONEOR8「裸足」

もっといろんな劇団のお芝居を見よう!パート2です。
迷子の迷子の鬼門となっている新宿。THEATER/TOPSでONEOR8第15回公演「裸足」を見てきました。前日に予約したにもかかわらず、なんだかとても見やすい席でびっくりしました。偉そうに書いておりますが、実はそもそも天然スパイラルのHPのミカさんの記事で「じゃ、行ってみるか」と思い立ったのでした。全くの初見です。
劇団は98年に舞台芸術学院の卒業生で旗揚げしたらしく、出演者の方々チームワークはよさそうな感じ。この公演は客演がいました。

劇団のHPから引用しますと

園児たちは 裸足で駆けずりまわった
先生だって 裸足で駆けずりまわった
春休みの幼稚園
園児たちのいない幼稚園
裸足の人は誰もいない
でも先生たちは
入園式の準備に駆けずりまわっていた…

とありまして、入園式を控えた幼稚園の先生方のインサイドストーリーです。上演時間は1時間45分くらいでした。
入園式の準備とあわせて、ある先生が園児に怪我をさせた責任やらなにやらを問われていて保護者と幼稚園、先生方内部でごちゃごちゃとなっている状況が背景にあります。それと女性の職場ですから、非常に感覚的なもやもやっていうんですか。割り切れない感情みたいなものが漂っているお芝居です。

日常を細かく描写するスタイルでした。「あるある」「そうかもね」って感覚は味わえます。ただ確かにパンフレットにもあるように先生方は駆けずり回っていたけど、全体的に緩い感じがしました。前半部分が同じパターンの繰り返しだったものだから、余計切れ味が鈍い印象を持ちました。入園式前の子供のいない状況の中ですから、その緩さも実は手の内なのかもしれません。

事故の関係者?志穂が出てきてから、幼稚園の先生方のごっちゃごちゃした人間関係がリズムを持って来ました。志穂ってのは卒なくなんでもできる人で「トイレも一緒に行こうよ」的なノリのほかの先生とは合わないんですよね。合わないことを合わないと言ってしまうちょっと子供じみたところがあって、そこらへんの変化が後半丁寧に書かれていました。

志穂が園長先生に薦められて牛の物まねをしてストレス解消しているところとかは「あ、絶対やるな」と予想できたし、割と確信犯的に場面を作りこんでいたような気がします(いい人を描いているのを見るってものすごく抵抗がある私は相当ひねくれているのでしょう・・・。ちょっと勘弁してくれって恥ずかしくなった場面もあります)
他の先生方と鶴を放り投げているところは太田胃酸のCMあるいは映画「櫻の園」の中で使われている”ショパン24の前奏曲」より第7番”が非常に印象的でした。

そう、この曲を聴いたときに、この芝居は「櫻の園」なんだと思ったのです。女子高なんですよ、ノリが。だから園長の息子でボンボン先生の達朗がとんちんかんにアンパンマンだったりするのですが、男子諸君は幼稚園の中では脇役なんですよね。の割には職人見習いの藤代とかが悪目立ち過ぎていたように思えるし、男子の出し方がはっきり言ってくどい(汗)。テンポが狂って集中できなかったです。

あの映画の中でも、桜の園の上演を前にした女学生達の間には決して他人には挟めない空気があった。「裸足」は場所を幼稚園に置き換えて(というかモチーフに使って)大人なのに子供じみたところのある女性教師たちの「子供じみた諍い」を肯定するところに意義があるんじゃないかと思ったのです。(実際劇中のマジ張り手にびびりました。)そして、最終的には仲良くなる予兆を残しながらお芝居は終わるのです。

丁寧だし、悪い印象は持たなかったので、次の作品も機会があったら見てみようと思う劇団でした。

公演情報 ONEOR8第15回公演「裸足」
     新宿THEATER/TOPS
     2004/5/25〜5/30
     作・演出 田村 孝裕
チケット代2,800円に対して☆☆☆
http://www17.big.or.jp/~oneor8/