天然スパイラル・麗しき崩壊

友達に誘われて天然スパイラル第7回公演「麗しき崩壊」を見てきました。会場は目白駅からやや遠い、シアター風姿花伝。できたばかりの小屋なのか、とても真新しい劇場です。むしろマンションの一部屋を改造したって感じ。椅子席とお座布席(これは最前列)で構成されたどれくらいでしょうか200くらいのキャパか?そんなこじんまりとした劇場でした。

天然スパイラルは、同じ専門学校のミュージカル系の学科の同期で作った劇団だそうです。HPを読むと在学時はそんなに仲が良くなかったとか。6人のメンバーと5人の客演で上演された27場でした。プログラムを見ると「解散の真相」から「Ramble PUBなれのはて」までだーっと書いてありますが、途中ビデオでの一息を入れた以外は休憩なしで一気に2時間近くあったような気がします。

とりあえずタイトルだけでも書きますと

オープニング
解散の真相
Ramble PUB「なれのはて」
陽だまりの詩
吸血鬼の秘密
クールガイみつお 1
不良少女M
昇天女教師
来世で!
Mジャポネスクショー!
少々リラックス(ビデオあり)
バトルロイヤル
女の妄想
プレイバックPart2
ラブ・サイケデリコ
こくはく
臨時合コン
重ね着
物々交換
校内革命
モーニング主婦
イミテイションゴールド
スガくん?
おかんと息子と姉
クールガイみつお 2
Ramble PUB「なれのはて」
エンディング

27場それぞれに題名があったことから短編集かと思ったのですが、最後の最後にこれが一つの物語で繋がっていて無駄がないものであることに気づきました。連続していて「繋がっている」というのではなく、全然違う場面で出てくる人が3つくらい後の場面で主人公となって登場したり、一時も気が抜けない面白さがあります。だから本当は1回目よりも2回目の方がもっと面白くて笑える公演です。トータルでは少しずつどこかがずれていたり崩れていたり、そんなバランスの中のアンバランス、言い換えれば予定調和の中の不調和みたいなものが心地よかったです。

作風としては「あるある」とか「そうだよね」とか実は気づいているのに口にしないことを、あえて抉り出して笑いと化してしまう罪深さ(笑)笑いながら「悪いなぁ」と思うけど、そういうものをやめられない人間の性とでもいいましょうか。極悪人になる前のいぢわるな感覚はかなり捨てがたい快感でした。そして現実に見えているものが少しずれた状態になっていて、そのずれが重なり一人歩きしたときにまるで真実のように見えてしまう怖さもありました。「もしかして、これってホントかもしれない」と思ったネタもたくさんありました(例えばスガくんとか、臨時合コンとか)

R18指定だったそうで、そういえば確かにエロネタもありましたね。エロスはあって当たり前、全然問題ないのが宝塚ファン?(笑)「昇天女教師」タイトルからしてすごいですが、制服を着た見目・高校生の青臭い野郎系な生徒たち(金房、中塚、田中)が女教師(室伏)を挑発しまくって、先生もだえてしまっていました。何がいいって女教師じゃなくて、生徒たちのつきぬけ度がすごい。劇場内固唾を呑んだ雰囲気に満ちていました。

それとロイヤルファミリーネタも。いや「不良少女M」の時に「尊皇攘夷」を背負った不良が出てきて「世のため、人のため!」なんて感じの台詞を言っていたからおかしいなと思ったら「バトルロイヤル」でマコ、カコ、紀子、秋篠宮紀宮ですからね(キャスト表は最後に配布されたので見ていた時点では台詞の範囲以上には誰が誰かは不明)。アルバイトしたいマコが「臨時合コン」ではクラムチャウダー飲み放題のカラオケボックスでバイトしているし、人の心配より自分の結婚の心配をしろ!>○宮なんて、みんな思っているけど堂々といえないことを言い放っちゃっているし。眞子内親王がスケートの大会に出たネタももちろん盛り込んでいましたよ。ここらへん、1回目よりも2回目の方がもっと面白いところの一つです。

出演者の方がミュージカル科出身なだけに歌って踊るのは見ごたえがありました。プロローグで狭い舞台の中、女たちが踊る姿はある意味圧倒。かっこよかったです。うまいし。友達が言うには、この公演はまだ歌と踊りが少ない方だったらしく、次回には期待したいです。

作者であり、演出と出演をしている金房実加さん。ものすごい才能です。悔しいくらいです。シニカルにしっかり世の中を眺めている。この方は誰かが笑われていても「どういうところがおかしいのか」分析しながら口元でふふって笑うような、そんな人なんじゃないでしょうか。(勝手に想像しておりますが)ディズニーランドとかに行ってもテレてはしゃげないような、そんな姿が目に浮かびます。

個人的にとっても印象に残ったのは中塚さんのヒトエ(スピード)やクールガイみつおのみつお(室伏)、それに柴原さん(客演)とってもお芝居の間が良かったです。これだけ女子がたくさんいるのにものすごく息の合ったお芝居で、見ていて倦怠感がなかったのは自分でも驚きました。田中さんの男子姿もかっこよかったです。

いや、ホントお芝居の面白さって規模じゃないです。資本でもないです。脚本と演出とメンバーが面白ければ小屋じゃないですね。はまりそうな劇団です。

公演情報 天然スパイラル第7回公演 麗しき崩壊
     作・演出 金房 実加
     2004年5月21日〜23日全5回
     シアター風姿花伝