レ・ミゼラブル

H17.05.03 「レ・ミゼラブル」帝国劇場

久しぶりの「レ・ミゼラブル」キャストが一新されてから見たっけ?というくらい、久しぶりでした。本田美奈子さんが急病で休演しているので、残念でしたが、今回はシルビア・グラブさんのファンティーヌと新妻エポニーヌの組み合わせの回で、石井バルジャン、鈴木ジャベール、岡田マリウス、河野コゼットで観劇しました。(紹介の順番が違うだろ!というツッコミはおいといて)

いい話っすね〜〜〜本当に。何回も見ていても飽きない作品で、久しぶりに見たら続けて見たくなりました。見ていて泣いてしまうポイントが昔と変わらず、パブロフの犬状態で泣けたところには自分で可笑しかったのですが、そのポイントは自分にとってこの作品の肝の部分、この作品に私が共感するメッセージなんでしょうね。だから「昔のキャストは良かった」という比較はしないで、今回はできるだけ物語だけに集中していました。

印象に残った場面は3点あって、
1 バルジャンが神父から銀の蜀台をもらって逃げたところ
2 エポニーヌのマリウスに対する想い
3 バルジャンが亡くなる時

前回観劇した時はアンジョルラスら若者の熱さ、「大人はわかってくれない」的なやるせなさや、マリウスとコゼットの目線から愛ってのは犠牲の上に成立しているのかしら?と目がいっていました。でも今回はバルジャンとファンティーヌとエポニーヌの三人に集中できた。他人(=神)のために生き、運命を預け自らの命を全うする姿に、恥ずかしながら三人の共通性を初めて見えたという感じでした。
三人とも決して聖者ではなく、澱んだどうしようもない環境にいながらも「誰かのために」生き抜くことで、悲惨な死に方をしていても心の安寧を得たんだなぁと思えたのです。そんな思いがあって、最後にマリウスとコゼットを囲んでバルジャンをはじめとした亡くなった全ての人が見守る場面は、幸せが自分達だけで得られるものではなく、いろんな誰かからもらっているものなんだろうなぁと、じ〜んと来てしまいました。
ジャベールが自殺したのは、バルジャンが机上の空論ではなく本当に他人のために自らを投げ出していることに対するショックと、追いかけていて恨んでこそする自分を逃がしたことに耐えられなかったんですよねぇ。他人ではなく自分が自分を否定してしまったことが、彼の生きる道を閉ざしてしまったんだろうなぁと思うのでありました。

マリウスで見ていたカズがバルジャンをするなんて、時の流れを感じます。相変わらず熱いところがあって、見た目は年を取っているんだけどやっぱり若い感じは否めませんでした(笑)。でも歌も上手いし(当たり前ですが)何を唄っているのか歌詞がよく聞き取れたから、重唱の場面でもとても気持ちよかったです。

ジャベールの綜馬さんは、歌はとても上手いし、声もいい。ただこの作品の中ではどの歌でもトーンが同じなので、マリウスとの温度差が大きすぎる。クールすぎて面白みが欠けていました。ジャベールはバルジャンを通して自分の人生に疑問を持ち始めてしまい破綻するわけだから、そこらへんの感情の波が欲しかったように思います。

ファンティーヌのシルビアさんは、ちょっと今までのファンティーヌのイメージと違っていて、んん〜微妙かも。声が意外に低くて「あぁここでハイトーンが欲しい!」というもどかしさもありました。上手いんですよ、歌もお芝居も。だけど、もう少しってところで。

マリウスは元TO BE CONTINUEDの岡田さん。初めて見ました。歌手っぽく(笑)意外にやるじゃん!と思いましたけど、波田陽区に見えて仕方ありませんでした(ファンの方、すいません)コゼットに対してはLOVE満載でよかったのと、ちゃんとアンジョルラスと住み分けできていたのが良かったです。

エポニーヌの新妻さん。ミス・サイゴン以来です。歌うまいっすね。若いマリウスとの相性は良かったです。コゼットと再会するときにもうちょっと動揺があると深くなったような気がしました。エポニーヌがバリケードに戻ってくる前にもう一つ場面がありませんでしたっけか?死んでしまうところまでが結構あっさりしていたような印象があったのですが。

コゼットの河野さん。元アニーの方のようですが、唄いだすと突然オペラになってしまっていてびっくりしました。芝居の中の歌というより、歌の中に芝居もあったね〜みたいな印象を持ちました。マリウスとエポニーヌとの三重唱の時に、声がしゅーっとフェードアウトしてしまうような、はっきり言えば聞こえなかったですぅ。私、コゼットは圧倒的な「白」のイメージを持っていたんですけど、そういう点のインパクトに欠けていました。

アンジョルラスの東山さん。ずいぶん前に見たチラシの中で怖い写真が出ていたから、どんな人だろうと思っていましたけど、歌も聴きやすくて(今さん系?)立ち姿もかっこよく、凛々しくてドキッとしました。バリケードの場面のリーダーぶりが間違いなく”アンジョルラス”とっても印象が良かったです。他の舞台も今後見てみたい1人です。

テナルディエ夫婦は、夫は佐藤さん(ワハハ本舗)に妻はルミさん(瀬戸内)。この人たちのキャラクターならこうくるだろうという予想を裏切りませんでしたね〜。にしてはカフェの場面で結構客席のノリがイマイチだったような気がしてなりませんでした(苦笑)。

休憩時間にロビーで交わされていた会話を聞くと、この回は結構盛り上がっていいノリだったようですが、私は見ていて場面と場面のつなぎが悪いような感覚があって、今ひとつノリが良かったとは思えませんでした。間が悪いっていうか・・掲示を見ると終演が15時15分予定。以前見た時は、上演時間だけで3時間くらいあったような記憶があります。短目になって、場面を整理しているんでしょうかね?。それとも組合せの問題?

ともあれ、作品の素晴らしさは言うまでもないので、一度も見たことがないという方(このブログをご覧いただいている方ではいないかな)は安い席でもぜひ一度観劇してくださいね。

5月29日まで帝国劇場で上演中